壁面の使い方
つるバラは本来家の外壁面のような広さと高さの有る垂直面が最も適しています。品種の持っている能力を最大限引き出せる場所と言う事です。
今回は家と庭とのつながり方に付いて考えて見ます。庭造りで最も大切なポイントは境界、エッジ部分です。この解釈や出来具合如何で庭の美しさが左右されます。
家の外観で美観上好ましくない場所の一つが基礎部分でしょう。基礎と庭の接点が庭の美観を左右します。出来得れば隠したい場所であります。植物で隠す方法もありますがここでは手前にメッシュフェンスやパイプアーチ等を組み合わせた空間作りを提案しています。家と庭、その先には公共的なスペース、道路があります。最も道路から遠く安心感の得られやすい場所が家の外壁面に接した空間では無いでしょうか。
家の室内と庭、その間に戸外室のような場所作りが出来たら。椅子とテーブルを置いて室内の延長上にありしかも開放感に満ちた空間。しかし心地よい包容感の得られる空間造りが出来るのではないでしょうか。
つるバラを使う立場として考えますと平面の前に今一つ変化に富んだ構造物があり、壁面に誘引した枝の一部をアーチを経由させて誘引することが出来ます。壁面に植えたつるバラの株元を隠す事もできます。何より庭に奥行きを与える効果が得られるのです。室内とこの様な空間にいる人が会話の出来るような状態を目指しています。
室内と庭が途切れることなく緩やかに結ばれた状態。これが理想的な姿であります。
庭を立体的な構成へと移行する為に、そのような感覚を見出すためのきっかけとしても効果的な方法であります。
出窓に付いても同じような事が考えられます。出窓の直下は雨水が当たらず植物が育ち難い状況であります。発想は同じ、出窓の前にメッシュフェンスとパイプアーチで簡単な空間を作り出窓の下を隠してしまおう。室内の出窓を通してテーブルと椅子の有る風景を作ろう。明日天気が良かったらあそこでひと時本を読もう。あの人とお茶を飲もう。よく晴れた日であれば其処に座って永遠を見てみようか。暮らしの中にささやかだが一服の清涼剤たる存在になれれば。人の気持ちに非日常の感覚がすっと入ったらと思って考えた場面です。
この様に家の外壁面の手前で一工夫するだけで、家の外観は親しみやすい妙に人間臭漂う場所へとなります。視覚的な美を追求するのも勿論ですが内面的な美しさ、人の感性に直接訴えかけるような効果を持つ空間になると思います。周囲の人に共感をうる事の嬉しさは最上の喜びにつながります。内容のギュッと詰まった庭造りが楽しいのです。
また庭造りの精神論に陥ってしまいました。