つるバラの壁面誘引

つるバラの壁面誘引

家の外壁面はつるバラを誘引するのに最も効果的な場所です。ほとんどのつるバラを咲かせて効果を得る事のできる場所です。制約が少なく誘引もし易い場所だけに、積極的に活用したいものです。

 

壁面につるバラの枝を誘引するためには、枝を固定する為の針金を設置する必要があります。針金はユニクロ(クロームメッキされたアイアンの針金)とステンレス針金を用います。ステンレスは錆びず強度が高く針金の伸びが少ないため、強度を必要とする部分に使います。ステンレス針金は 20 番を水平に張る部分に用い、縦に張る場合、雨トイ沿いや窓枠などには 18 番を使います。

 

針金は数字が大きいほど細くなります。ユニクロ(鉄製)の場合は主に 18 番を使い、強度を必要とする箇所は 16 番か 14 番を使います。16 番はかなり太く硬くなりますので、扱い難い所もあります。14 番は更に太く硬くなり、折り曲げや切断には力を要します。

 

壁面での針金引きは、ビスやヒートン、釘を要所へ打ち、針金引きの基点とします。壁に釘を打つと家が傷むと考えられますが、壁面素材の長足の進歩により、この様な心配は少なくなってきました。もし、どうしても壁面に釘やビスを打てない場合は、壁から出ている突起物を全て針金引きの手掛かりとして用います。

 

先ずは縦に張る場所を探します。雨どいの固定金具は壁面に打たれた大きな釘の様なものです。脚立に乗り、上の固定金具から下の固定金具へと縦に針金を渡します。ユニクロなら 16 番か 14 番、ステンレスなら 18 番か 16 番を使います。

 

その他縦に渡せそうなのが窓枠です。アルミ製の窓枠なら壁から 2cm くらいは出ています。これに針金をぐるりと廻しラジオペンチでギュッと捻り固定します。ユニクロなら 16 番。ステンレスは 18 番を使います。

ピエール ド ロンサール

窓枠以外にもドアの枠など利用できるものはフル動員して針金引きの基点とします。アイディア次第でどんどん夢が拡がります。壁の下、基礎部分には床下の換気を図るためのスリット状の金具がはめ込まれています。これがあったら針金引きの基点として利用できます。窓枠の針金に渡せば縦の針金を増やす事ができます。

 

次に縦の針金から隣の縦の針金へと、横方向に針金を引きます。H 型、またはハシゴ型を想像すると分かりやすいでしょう。針金の間隔は 15cm くらいが理想です。間隔が広いと細かな花の咲く姿を演出するのには難しくなります。枝の太さも関係します。太枝性の品種なら多少間隔が広めでも良く、逆に細枝性の品種を誘引する場合には、15cm 以上の間隔では物足りなさが残ります。

 

窓周辺にはひさしが付いた状況もあります。ひさしがある場合も、極力針金をひける様に工夫します。ひさしからこぼれ落ちるように咲くつるバラの風情は誠に美しく、窓をより一層夢のある風景にします。

 

出窓には是非こぼれ落ちる様なつるバラの咲く風景を作りたいものです。窓枠は 3 つくらいに分かれていたり、窓の開放状況も異なり、枝の誘引は状況に応じて行います。枝先を出窓上部から下垂させて咲かせる風景が最も有効です。細枝性の品種であれば殆ど失敗はありません。

 

ポイントは出窓の屋根、ひさし部分に針金が渡せるか否かにかかっています。出窓の屋根部分にはトタンがよく使われています。金属と針金では摩擦が少なく、屋根に付けられた傾斜が災いして針金が滑り落ちるケースがあります。この場合は、カー用品のお店で厚手の両面テープかこれにゴムを張り付けたりして、針金の固定に努めます。

トレジャー トローブ

金属面やガラス面に枝が接触するような場合。トゲが金属に触れ合って不快な音を出す場合があります。この様な場合は、枝のトゲをあらかじめ取っておきます。ガラス面からも不快な音が出ますので、誘引した枝や下垂した枝からトゲを取っておくと良いでしょう。

 

壁面につるバラの枝を密着させると壁の表面、塗面が痛むと指摘を受ける事があります。細いワイヤーの場合、誘引された枝の重さで多少針金は伸び、壁面に密着する事は殆どありません。

 

つるバラの花は枝先に咲きます。花を咲かせたい場所に鋏を入れ、枝先を作ると、養分は根から枝先へと向かい、終点付近にある芽を押し出すようにして枝の再生がなされ、再生された枝の先端には蕾を持ちます。窓枠に針金を一週廻すことは枝の終点を窓枠に集めることとなり、花に覆われた窓の演出となるのです。

 

針金引きが出来たらほぼ、思い通りにつるバラの花を咲かせる事が出来ます。針金引きは結構手間と時間を必要とします。また、誘引以上に高所作業を強いられる場合もあります。たかが針金と思わず、絵心と忍耐を持って作業して下さい。要は咲かせたい場所に枝を固定して置ければ良いのです。

 

壁面に咲かせる場合、枝は水平方向か斜め上に向けて誘引されるようになります。株元から放射状に上方へ枝を誘引します。枝と枝の間隔は枝先ほど間隔が広くなるように誘引を行います。交差する枝は良いのですが、並行する枝は自然界には見られず、不自然と感じられます。株元から放射状。指を広げた手の状態をイメージして下さい。

 

枝を曲げる事は頂芽優勢を崩し開花と翌年の花を咲かせる枝の誘発につながります。特に株元からのベイサルシュートは途中から大きくたわめて弧を描くように誘引します。水平面を基準として弧の頂点を境に枝先には開花が起こり、頂点から株元にかけては、サイドシュートが発生します。

 

必ずしもこの通りにはなりませんが、誘引することで枝に負荷をかけ、開花とサイドシュートの発生を促す事が出来ます。開花位置の調整と成育の基点を株元近くに設ける事が出来ます。よりコンパクトな姿でつるバラを管理する場合、有効な手段です。

 

樹形図で自立型の姿をした品種は、枝の誘引によりある程度の成長基点の管理が可能となります。分かり易い姿がアーチにクライミングローズを誘引した姿です。春の開花と共にアーチの頂部からサイドシュートがビュンビュン伸びます。これが成長基点の人為的管理の最も分かり易い事例です。アーチではしょうもない姿ですが、壁面ではこの心配はいりません。

 

つるバラの品種により面を作ると結果の得られる品種。線で咲かせると良い品種など、様々です。一般的につるバラの咲く風景でポイントとなるのが、枝垂れる様なたおやかに咲く姿です。この姿が出せるのは殆どが一季咲のつるバラ、もしくは枝先に強い剪定を加えずに誘引された枝からこの風景が作られます。

ロサ ムリガニー

壁面でもこの風景を出すには枝先の繊細な扱いが必要となります。無剪定の場合もありますが、大抵は鋏を入れて、開花位置の調整と開花状況の調整を行っています。強い剪定では出さない姿。私はこの風景でお客様から評を得る事が出来、今日があります。繰り返し咲き品種の利点は判ります。繰り返し咲くことで失った部分とは、このたおやかに枝垂れて咲く風景ではないかと思います。

 

繰り返し咲きの品種の多くは大輪か中輪咲。美しい花を四季に渡り鑑賞する事を目的としています。美しく品質の良い花を得るために、剪定の度合いは必然的に強くする傾向となります。四季咲品種がそうであるように、繰り返し咲品種も花は上を向いて咲く事が殆どです。強い剪定を施す事は咲く姿に影響するのです。

 

繰り返し咲き品種を壁面に誘引する場合、一季咲つるバラのように横に枝を誘引するよりは、意識的に壁面の縦方向へ枝を配置して咲かせる方法も効果的です。この誘引方法は枝の先端を分散配置出来るように、ベイサルシュートやサイドシュートは縦に使い、途中から大きくたわめて負荷をかけ、開花を得ます。

 

樹形図 1、2、3 の品種は堅く太い枝を特徴とします。この樹形で繰り返し咲きがあれば、伸びた枝も多少切り戻す事に論理的な整合性は得られます。一季咲なら枝切っちゃえばお終いですが、繰り返し咲きは春以外にも開花が得られるので、心理的負担も少ないと考えます。繰り返し咲シュラブローズは壁面が最もその特徴を生かせる場所です。一季咲つるバラのような横への枝の誘引より、剪定を含めた縦で咲かせる方法が最良の楽しみ方であると思います。

 

株間を狭く上に長い開花状況を作るには固有の樹形を持つ品種も適しています。例えば、樹形 9、10 の品種。又は 1、2、3 の樹形です。 9、10 の品種は伸びた主幹上部から発生する小枝、これが下垂して開花が起こります。特にランブリング レクターを個人庭園で使う場合、この使い方以外に使用法は無いようにも思えます。

 

バレリーナやフィリス バイドなど、壁面での縦に咲かせて有効な品種は多く、無理にやれアーチだのオベリスクだの言う前に、壁面をお使いになる事をお勧めします。

 

そのためには、針金引きが全てです。これさえ行えれば、美しい外観を持つ家が実現します。家の壁は景観の一翼を担う大切な素材。心を表す絶好の場所です。ぜひとも、優秀なワイヤーマン目指して絵心を働かせて下さい。


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