つるバラの剪定誘引手順
つるバラを使いこなすために
アーチやトレリスに合わせて育種開発されたつるバラの品種は少ないと思います。あらかじめ使う場所を想定して品種を作るケースは少ないと言う事です。今現在ある品種の中でどれをどの様に使ったら良い結果が残せるかは、使う側の判断に委ねられています。
庭園は応用芸術であります。つるバラも品種固有の性質をどの様に使いこなすかがポイントです。これなくして美しい風景は実現しません。最も大切なことは品種選定ですが、つるバラの剪定・誘引の季節をむかえますので以下思いつくままいくつか書き記します。
冬作業 - つるバラの剪定誘引手順
- 枝の固定や保護の為に結わえた紐などを切る
- 誘引した対象からつるバラの枝を外す
- 地上に降ろした枝の葉取り・枝単位にまとめ整理をする
- 太い主幹から誘引作業に入る
1. 枝の固定や保護の為に結わえた紐などを切る
前年冬に枝を誘引した紐等を取り去ります。全ての枝を外さなくてはなりませんので丹念にして下さい。強引に枝を引っ張るとたちまち折れてしまいます。春から育てた大切な枝です、些細なことで枝を失うことの無いように心がけて下さい。
2. 誘引した対象からつるバラの枝を外す
全ての枝を誘引した対象から地上に下ろします。この作業は枝を折る確率の最も高い作業で細心の心使いが求められます。枝を折る原因は強引に引っ張る事から発生します。枝がなぜ折れるかといえば外し忘れた紐、もしくは棘の存在によります。
つるバラにとって棘とは枝と枝を引っ掛けたり他の植物に棘を引っ掛け枝の固定を図る為の道具であります。枝でよじ登るために使う道具、従って棘は逆向きにカーブしているケースが多いのです。逆に枝を引っ張ればどこかが折れるのです。
3. 地上に降ろした枝の葉取り・枝単位にまとめ整理をする
枝が地上に降りた時点でまず葉を取り除きます。葉を取り除く理由は病害虫防除の観点から取り去る事。枝全体の量や長さなど全体の把握をするためにも葉は取り去る必要が有るのです。葉が無くなったら枝が絡み合った状態を整理し太い枝単位にまとめておきましょう。この時点で不要な枝の剪定作業を行うことが良いとされます。不要な枝の判断が付く場合はこの時点で剪定を施します。
4. 太い主幹から誘引作業に入る
つるバラの株元から出ている主幹の内最も太い枝か、誘引する対象に近い主幹を選び誘引に入ります。
誘引する枝には前提とすべき基準があります。細い枝の上に太い枝を重ねない、下垂する枝の手前に上にあがる枝を誘引しない、など私は鉄則として必ず実行しています。作為を消し自然で違和感無い風景に仕上げるための掟とも言える事柄です。太い枝は最も下になり細い繊細な表情を持つ枝が目に触れやすい表面に出ている状態が最も自然な風景です。
紐を枝に一周させると枝が太ったときに食い込みます。写真のように紐を通すと食い込みを防ぐことが出来ます。針金と枝、枝と枝を結ぶときもこの結び方を参考に行ってください。
枝の固定には麻紐が使い勝手一番です。結わき方は枝と枝が直交する場合にも針金と枝を結ぶ時にも枝の成長により紐が食い込まぬような配慮をしてあげて下さい。8 の字に結ぶと枝を傷めないと言われますが、結果として枝を紐で一周させますので急激な枝の成長には対処できません。画像で示したような結わえ方を私は行っています。今現在はこの方法が最良に思えます。
麻ヒモはホームセンターや金物店で販売されています。細いヒモで直径 2.5 ミリ程度のものです。少し太めのものまで 2 ~ 3 種類用意し、枝の太さに対して適切と思われる様な太さを使います。繊細な枝先は細い麻ヒモ、ベイサルシュートなど太い主幹は 3 ミリ以上の太さを持つ麻ヒモ。株元付近の太い部分は棕櫚縄が強度的にも適しています。
太い枝を誘引するときは必ず枝を引っ張らず株元へ押し戻すような感じで枝の姿を作ります。誘引と表記すると誤解を招きやすいのです。枝は押し戻してタメを作りながら曲げるのです。両手で枝に曲線を描かせ対象へヒモで固定し、姿を出します。枝を折る原因の第 2 位が誘引時に枝を引っ張る事で起こります。必ず実行してください。
申し遅れましたが皮手袋の着用が不可欠な要素です。枝にタメを作るには両手でシッカと枝を掴まなければならんのです。手のひら部分にのみ皮を用いた製品もありますが、関節部位に棘を刺すとダメージ甚大です。本来保護すべきは手の甲、関節部分なのです。全てが皮で覆われた手袋の着用をお勧めいたします。棘の状況や枝の太さに対応して厚手から薄い皮手袋まで数種用意しておけば万全です。